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歌人

岡本真帆

No.114 歌人・岡本真帆 31音の魔法

Maho Okamoto

2024.12.29(日)
11:30- 放送
(BS日テレ)

SNSの寵児、岡本真帆の歌はこんなにさみしそうだったのか、ということに、番組の冒頭ですでにわたしたちは気づかされるだろう。ざわざわとした雑踏の音と重なりつつしずかに読み上げられる短歌から聞こえてくる「あたしでいいの?」や、「ひとりにしない」が、深い井戸に落とした小石のように響いてくる。

No.114 歌人・岡本真帆 31音の魔法

番組のなかで編集者の村井光男は「十年前と比べると本屋の(短歌の)棚がひと棚増えている」と述べる。短歌ブームは何冊かのベストセラー歌集を生み出したが、岡本真帆はそのなかではもっとも人間くさい作品をつくる歌人である。作者の身体から切り離され、透明な表情をした短歌が〈バズ〉りやすい傾向があるのにもかかわらず、岡本の作品には、あくまでひとりの人間が生き、歩き、食べている気配がある。

No.114 歌人・岡本真帆 31音の魔法

東京と高知県の二拠点生活をする岡本の生活に沿って、この番組では二色の岡本真帆が切り取られる。岡本の故郷でもある高知県の、大きな川、鉄橋、商店街、神社、公園、記憶のなかを案内されているようにしずかで人の気配がなく、後半での東京での生活に人間の活気があるのと対照的だ。作歌の動機を深掘りするよりも、カメラが同じ景色を眺めつづける。このロードムービーのような映像がなによりも岡本の作家性をつたえてくる。彼女の作品に書かれているのは、ざわめきのなかで相対化される孤独だからだ。

No.114 歌人・岡本真帆 31音の魔法

簡単な言葉が使われているから。自信のなさや、ずぼらなところも見せてくれるから。岡本の短歌が共感を呼ぶのはそういった理由もあるだろうけど、ほんとうはみんなが「自分は雑踏のなかでひとりぼっちだ」と感じているからではないだろうか。番組最後の瞬間に注目してほしい。番組の一部でありつつ番組からはぐれ、ほんとうのひとりぼっちになった一首が残像のように目に残る。

No.114 歌人・岡本真帆 31音の魔法
text 平岡直子
岡本真帆

岡本真帆 (歌人)
1989年生まれ。高知県、四万十川のほとりで育つ。未来短歌会「陸から海へ」出身。
2022年、第一歌集『水上バス浅草行』を刊行。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATION
伊勢佳世
CAMERA
佐藤洋佑
CAMERA ASSISTANT
池越
AUDIO
山根則行/黒木禎二/戸田裕士
EED
池田聡
AUDIO MOVIE
富永憲一
SOUND EFFECT
玉井実
PRODUCER
設楽実/平田潤子
DIRECTER
安部真理恵
PRODUCED BY
テレコムスタッフ
IN COOPERATION WITH
本屋UNITÉ/ナナロク社/屋形船さこや/株式会社NHK文化センター
PRODUCER
設楽実/平田潤子
DIRECTOR
安部真理恵
PRODUCED BY
TELECOMSTAFF

EDGE 1 #44 / 2024.12.29

2024.12.29(日) 11:30- 放送 (BS日テレ)