ART DOCUMENTARY PROGRAM
スカパー! Ch.529にて放送中
没後30年以上を経て、いまだに秘教的な人気を博する澁澤龍彦。澁澤龍彦とは、いったい誰なのか。
最初に彼は、ジャン・コクトーの、そしてマルキ・ド・サドの翻訳者として現れた。では彼は仏文学者だったのか。
いや、そうではない。
たとえ、本人の著作の全集のほかに、翻訳の全集まで刊行されているにしても。
ちなみに、翻訳の全集が刊行されているのは森鴎外と澁澤龍彦のふたりのみである。
澁澤龍彦は翻訳のみならず、エロティシズムや退廃の美学に光を当て、該博な教養を背景に数多くのエッセイを発表した。
そして、遺作となったのは、魔術的な小説『高丘親王航海記』だった。
およそ、澁澤龍彦は澁澤龍彦であるとしか言いようのない特異な存在なのだ。
三島由紀夫が「珍書奇書に埋もれた書斎」と評した、その書斎は、龍子夫人によって生前のままに保存されている。
少なからぬ絵画やオブジェに彩られた澁澤龍彦の家は、それ自体が作家の内面を外在化させたかのようでもある。
本篇では澁澤邸にカメラを入れ、澁澤の研究者であるスティーヴ・コルベイユ、澁澤との出会いが進むべき道を決めたという気鋭の研究者、平井倫行、澁澤と親交があった舞踏家の笠井叡、三氏への取材と龍子夫人の回想によって稀代の文学者、澁澤龍彦の像を立ち上げていく。
今、あらためて澁澤龍彦に出会うためのドキュメンタリーが誕生した。
EDGE SP #18 / 2019.11.02