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詩人

水沢なお

No.117 透明になるまで

Nao Mizusawa

2026.01.24(土)
08:00-08:30 放送
(スカパー! 529ch)

海(sea)と詩(シ)。
第2詩集『シー』のタイトルの音のなかで、重なっている2つの存在。惹かれる一方でどちらも「怖い」と水沢なおは言う。少し笑って。それから「それでも向き合い続けたい」と確めるみたいに頷く。波打ち際で。個の身体と世界そのものとしての水は揺れ続け、それぞれの輪郭を滲ませることばは溢れこぼれ、詩の飛沫をあげる。詩集『シー』のカバー画に描かれた少女にも似た姿で水辺に佇む彼女は、不定形なからだに不定形なことばを宿してどこまでも広がりゆこうとする詩人だ。

No.117 透明になるまで

冒頭の東京でのシーン、水沢は健やかに夜の波を漂う魚のようだ。
中原中也賞を受賞した第1詩集『美しいからだよ』は、身体に対する独特の感覚がなまなましい柔らかさで連なる詩行のなかに息づいている。他者との関係性も、物語があるようでいてつかみきれないおもしろさ。それが、夜の街路で「(東京では)透明な感覚でいられる」「誰も見てないし、どうだっていいみたいな」「気楽」と水沢が語るとき、詩のなかに息づいていた身体感覚が日常のリアルとして迫ってきた。

No.117 透明になるまで

〈わたし〉という個の輪郭を持って私たちは生きているけれど、その殻は外から見られ、決めつけられ、暴力に晒されたりもする。そのように不自由な現実の枠組み、輪郭を、水沢の詩のことばは滲ませ、ほどいていく。身体のありよう、生殖も、交接も、今の私たちが知らないフェーズへと解き放たれる心地がする。不定形に変容していく自由なことばのからだの手触り。それは美しくて、同時におぞましいかもしれなくて、ちょっと怖い。だけど、だからこそいいのだ。

No.117 透明になるまで

しずおか連詩の会への参加を経て、水沢は「もっと破りたかった」「殻から出られなかった」という思いを抱えたまま、富山のヒスイ海岸へ行く。夜明けの海辺、透き通った翡翠を探す水沢は、まるで詩のことばを探しているかのよう。その姿を見守るうちに、見つかることより探し続けることそのものが”詩”なのではないか、と思えてくる。
静岡では、連詩のなかに「詩になってしまいたい」と書いた水沢なお。富山への旅の後に書かれた詩「透明な石」に、「わたしのかけらが散らばっていた」ということばがあった。殻がひとつ砕かれ、生まれたものがあったのだろうか。『美しいからだよ』は、〝美しい身体よ〟であり〝美しいから、だよ〟だったけれど、〝美しい殻、だよ〟でもあったのかもしれない。
海(sea)と詩(シ)と彼女(she)。その揺らめきが、波となってこちらまで届く。

No.117 透明になるまで
text 川口晴美
水沢なお

水沢なお (詩人)
1985年静岡県生まれ。大学生の頃に初めて書いた詩『沼津』を現代詩手帖に投稿。2019年に発表した第1詩集『美しいからだよ』で、2020年第15回中原中也賞受賞。2022年第2詩集『シー』、2023年初の小説『うみみたい』を発表するなど、活動の幅を広げている。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
CAMERA
髙野大樹/佐藤洋祐
VIDEO ENGINEER
井澤賢博/付明宇
EED
西村康弘
AUDIO MIX
富永憲一
MUSIC
小鹿紬
PRODOCER
平田潤子/設楽実
DIRECTOR
中村有里沙
IN COOPERATION WITH
公益財団法人 静岡県文化財団 / HiBARI BOOKS & COFFEE / 喫茶店awatenvou / 魚津水族館 / 真珠コーナー
PRODUCED BY
テレコムスタッフ

EDGE 1 #47 / 2026.01.24

2024.12.29(日) 11:30- 放送 (BS日テレ)