ART DOCUMENTARY PROGRAM
スカパー! Ch.529にて放送中
京都で、百年以上も前に真言宗の新聞社として創立された六大新報社。
「六大新報」は明治23年(1890)に創刊された日本でもっとも歴史ある宗教新聞であり、ひと月に3回、発行されている。そこで、半世紀以上、記事を書き続けてきたのが、僧侶でもある今井幹雄さんだ。
「ここに人生を埋めたようなもんやね」と今井さんは語る。今井さんの実家は、宝塚の寺。
長男が跡を取ったので、今井さんは、会社に寝泊まりしている。
「自分が生死から解脱しないかぎり、人は救えない」と語る今井さんは、朝夕の勤行のため、六大新報社の二階に仏壇を作ってしまった。
今井さんは、京都駅前で拾った子犬と15年間、暮らしていた。そして、犬との暮らしから、学ぶところが大きかったという。
それは、言葉についての思い。人は誰でも死ぬ。そして、死には、言葉を失う世界と言葉を超えていく世界のふたつがあるのではないか。
今井さんは2年前に胃癌を宣告された。癌も老いの現れ、老いを自覚すれば、死も受け入れることができると今井さんは語る。
人間は仕事をすべてやり終えて死ぬことはない。だからこそ、仕事を引き継いでくれる人を育て、それを死んでから見守るのだ、と。
死と向かい合いながらも、生きることの意味を見つめる姿。
「祈るとは、自らの想念を浄めること」。その願いを込めて、今井幹雄さんは、今日も記事を書き続ける。
EDGE 2 #1 / 2002.01.23