ART DOCUMENTARY PROGRAM
スカパー! Ch.529にて放送中
東北の地で新しい日本画の可能性を追求する日本画家・三瀬夏ノ介。日本画は「日本の自画像」を描くべきだと語る画家が、東北に移り住んで見つけたもう一つの日本のすがた、そして東日本大震災を経て辿りついた日本画への思いをめぐって語ってゆく。
京都で学生時代を過ごし、東京や大阪を中心に活動してきた三瀬にとって、大学へ赴任し、東北へ移住したことが転機となる。「東北における美術」を探して東北各地に足を運ぶなかで、作品のインスピレーションを与えらることとなった。
彼の作品は伝統的な日本画の技法を用いながらも従来の日本画とは大きく性格を異にする。支持体の和紙を千切り、揉み、張り合わせ、四角い絵画形式に収まらないインスタレーションとも呼べる大作を手がけ、過去の作品を解体して新たに作り変えることも珍しくない。新作「日本の絵~執拗低音~」は、揉まれた和紙が地形のように、墨の濃淡が山々のように表現された、10メートル近い意欲作だ。
三瀬はまた、学生とともに「東北画は可能か?」のプロジェクトに取り組んでいる。東北各地の人々の暮しを取材し、東北でなくては生まれえなかった作品を制作する試みだ。始動して3年目、東日本大震災を経験。三瀬にとって被災地はスペクタクル化を拒むものであった。それを目の当たりにし、作るべきものがはっきりしたという。
多様な価値観が乱立する現代、日本画も更新される必要があると三瀬は語る。されは古今東西のパースペクティブをもった「日本の自画像」を描くことである。「様々な感情をが込められて、個人のものでもみんなのものでもある、時空をこえて残る作品を作りたい」。そう語る画家はいま、日本画を新しい地平へと開こうとしている。
EDGE 2 #35 / 2015.07.04