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漆芸家

下出祐太郎

往還の町 京都に生きる
~漆芸家・下出祐太郎 昇華する詩魂~

Yutaro Shimode

1200年の歴史を持つ日本の伝統工芸・蒔絵。その芸術性はもちろんだが、自然とけっして「敵対」せず、環境に負荷をかけることのないという特質もまた、世界に誇れるものだろう。本作がスポットライトを当てるのは、その伝統芸術をひとすじに究める蒔絵師・下出祐太郎だ。京都で祖父から三代つづく「下出蒔絵司所」を営み、即位の礼や大嘗祭の神祇調度蒔絵、伊勢神宮式年遷宮神宝蒔絵なども手がけた職人/作家である。
京都は伝統の息づく街、という印象が強いが、それは先人たちがかつてどのように目の前の作品に取り組んできたか、どのように日々を生きてきたか、その想いに触れることのできる「近さ」を意味してもいるだろう。下出自身もまた、かつての声に耳をすましつつ、自分のあるべき姿を真摯に問いつづけていく。

往還の町 京都に生きる ~漆芸家・下出祐太郎 昇華する詩魂~

二度にわたりH氏賞の候補にあげられるなど、詩人としての側面も持つ下出。詩を書くという行為について、「自分という玉ねぎをむいていくこと」と語る。彼にとっての創作行為とは、自己のありかたを考えることにほかならないが、しかしそれは、自分が抜きんでた存在になることを意味してはいない。周囲とどのように調和するか、これまで連綿と続いてきたいのちの道筋をどのように継承するか――。「おもてなしの心」ということばは商人のあるべき心がまえとして知られているが、下出の姿勢とも、根幹の部分で共通するものであるかもしれない。他者の存在によってはじめて「自己」があらわれることを、あらためてわたしたちは意識していく。

往還の町 京都に生きる ~漆芸家・下出祐太郎 昇華する詩魂~

京都という街と調和した「今」を描きはじめる下出。彼の生み出すものは、やがてあらわれる「未来」への大きな礎となっていくだろう。歴史という大きな波に対峙する、下出の高潔な姿勢が静かな余韻を残す。

往還の町 京都に生きる ~漆芸家・下出祐太郎 昇華する詩魂~
(text 若林良)
下出祐太郎

下出祐太郎 (学術博士・伝統工芸士)
1955年京都府生まれ
下出蒔絵司所3代目。即位礼や大嘗祭の神祇調度蒔絵、第61回伊勢神宮式年遷宮御神宝蒔絵を手がける。京都迎賓館では水明の間飾り台「悠久のささやき」等を制作。後継者育成に力を注ぐ一方、漆芸の研究、漆や文学の講演執筆活動にも取り組む。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
大場真人
CAMERA
宮内文雄
VIDEO ENGINEER
大場雅一
CA
野澤勝一
EDITOR
西村康弘
AUDIO MIXIER
吉田一明
ASSISTANT DIRECTOR
松田知子
PRODOCER
寺島髙幸/清田素嗣・設楽実
DIRECTOR
狩野喜彦

EDGE 2 #29 / 2008.09.06

2024.12.29(日) 11:30- 放送 (BS日テレ)