ART DOCUMENTARY PROGRAM
スカパー! Ch.529にて放送中
東日本大震災を経験して、「分裂していた言葉と身体が自分のなかで結びついてきた」と語るオイリュトミスト・ダンサー、鯨井謙太郒。若き日に、戦後詩を代表する詩人、吉岡実と出会い、吉岡のエッセイ「私の作詩法」に影響を受けた鯨井は、晩年の吉岡実と交流があった詩人、城戸朱理に新たな「私の作詩法」の執筆を依頼し、肉体と言語が測り合うかのようなダンスを創作すべく動き出す。
それが、結実したのが、2015年2月のダンス公演「毒と劔」だった。
高校を中退し、暴走族に入り、風俗店で働いていた十代のころ。風俗店のカウンターでドストエフスキーを、三島由紀夫を、吉岡実を読み、自分のなかに内面が生まれたと語る鯨井は、その後、伝説的な舞踏家、笠井叡の踊りを見て衝撃を受け、笠井叡の天使館でオイリュトミーを学んだ。
そして、オイリュトミーによって形成された身体でもって、ダンスを踊るようになる。
「毒と劔」は、鯨井謙太郒が、荒ぶる神、スサノオを踊るダンス公演。鯨井は、ユニットCORVUSを組む定方まこと(オイリュトミスト・ダンサー)と、浅見裕子、野口泉ふたりのオイリュトミストだけではなく、異ジャンルの踊り手とともにステージを作っていく。
太陽神アマテラスを踊る大倉摩矢子(舞踏家)、そして、アメノウズメノミコトを踊る四戸由香(ダンサー)である。
世界の分裂や断裂を繋ぎ合わせるかのように、スサノオがクニツカミの祖となったように、自らの踊りによって、国を新たに創造すること。既成のあらゆるダンスのコンテクストを肉体で振り切るようにして踊る鯨井謙太郒から、言葉と肉体の新たな関係が生まれ、未踏ダンスが始まる。
LIVE! EDGE #12 / 2015.05.15