ART DOCUMENTARY PROGRAM
スカパー! Ch.529にて放送中
「生命を描きたいんですよね」。
乳飲み子を抱き、射貫くような鋭い視線でじっとこちらを見据える女性が、荒い手触りの画布に収まっている。
『いのちの水』。画・増山麗奈。彼女は、画家であり、活動家であり、そして母である。
彼女が絵を描き始めたきっかけは、高山病研究者であった父と登ったヒマラヤに落ちる夕陽を見たときだったという。裸形の自然の美しさに魅了された画家は、以来「生命のおののき」をあらゆる活動の原点に置いた。
「9.11」に触発されて結成した反戦アート集団「桃色ゲリラ」もまたそうである。ピンクの派手な衣装に身を包み、屈託のない高い声で反戦や反原発をとなえてデモを行なう。いっぽう、もちろん子育てだって忘れない。そしてまた、画布に向かう。彼女にとって、アートと運動、そして育児は、矛盾するどころか、すべてが連環している。
「絵というのはキャンバスのなかにだけあるものじゃないと思っているんです。自分という絵具を社会のなかで好き放題に動かして、大きな絵を描きたいなという思いもあって、ああいうアクションもパフォーマンスも、みんな絵だと思ってやっています」。
完成した新作絵画『水の連鎖』には、ヒマラヤの大河の一滴が、女性に、子どもに、燃え上がる地球に、原子力発電所に、注いでいる。
EDGE 2 #28 / 2007.12.22