ART DOCUMENTARY PROGRAM
スカパー! Ch.529にて放送中
俳句、短歌、詩、戯曲、エッセイ……根源的な孤独と尽きせぬ思索の跡を、さまざまなかたちで「言葉」に記し続けた寺山修司。彼の死から三〇年。その足跡をたどる展覧会『ノック』の開催に併せ、東京・青山のワタリウム美術館地下の書店で、小さなリーディングイベントが開かれた。集まったのは現代を生きる詩人たち。その一人ひとりが、マイクを手に寺山の著作を朗読し、時には自ら手がけたアンサーソングも披露する。本編ではこのリーディングの模様を軸に、現代に息づく「寺山修司」の正体が探られる。
訥々と分析するような語りも、こなれた朗読も、想いがほとばしる不器用なパフォーマンスも。ほんの数分ずつだが、寺山が書き記した文字が声になるさまはどれも、読み手の身体や意識のあり方までも露わにするスリルに満ちたものだ。展覧会のタイトル『ノック』とは、かつて寺山が企画した30時間にわたる市街劇の名でもある。観客を箱に入れどこかに運び去る、地域住民に謎のハガキを送りつけ訪問するなど、都市の日常にいくつもの亀裂を走らせ、揺さぶりをかけた男は、今もその「言葉」を通し、人々の内なる扉をコツコツと叩き続けている。
LIVE! EDGE #11 / 2014.03.01