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作家

藤沢周

No.106 小説家 藤沢周 言葉ならざる花を言葉で描く

Shu Fujisawa
No.106 小説家 藤沢周 言葉ならざる花を言葉で描く

2022.01.29(土) 08:00- 放送
(スカパー! Ch.529)

小説家 藤沢周さんが2021年に上梓した最新作『世阿弥 最後の花』。
能の大成者 世阿弥の晩年を描き、大きな反響をよびました。

藤沢さんはこの小説のために仕舞いや謡を習い、
世阿弥の能の世界をからだで感じながら執筆をすすめたといいます。
番組では、藤沢さんも幾度となく足を運んだ佐渡島にて、
世阿弥の足跡と小説の世界をたずねます。

また能楽師・安田登さんも交えて、
藤沢さんご自身に世阿弥にたくした自身の想いを、語っていただきます。
藤沢さんが魅了された世阿弥とはー どうぞおたのしみに。

※藤沢周さんは2002年にEdge2に出演。
「海」がただ「海であること。小説家藤沢周の原風景

ディレクター後記

今回の取材は『世阿弥 最後の花』の作品世界や執筆背景を伺うことを中心としつつ、これまでの小説も含めた藤沢小説の本質に少しでも迫りたいと考えた。
小説家デビューからまだ間もない頃、藤沢さんは円覚寺の弓道場の裏に仕事場を借りた。番組では紹介できなかったが、そのきっかけは不思議なもので、ある日友人に鎌倉でのバーベキューに誘われ、時間潰しに円覚寺を訪れ仏殿の裏手に寝転がっていたところ、竹林のざわめきと共に「お前はここに住みなさい」という深い声を聞いたのだという。その声に導かれ、翌日には鎌倉への引越しを決めた。この鎌倉の地で、藤沢さんの小説は展開していった。禅思想、剣道、そして能。藤沢小説の変遷を円覚寺で聞いた。

No.106 小説家 藤沢周 言葉ならざる花を言葉で描く

世阿弥が流された佐渡。新潟で生まれ育った藤沢さんは佐渡を訪れる度、結界を越えるような特別な感覚を覚えるという。佐渡には私と、佐藤洋祐カメラマンとで赴いた。自然豊かな山道、歴史ある寺や御陵、薪能。佐渡の特別な雰囲気を感じながら映像に収めていった。
実は佐渡での世阿弥の足跡は、ほとんどわかっていない。世阿弥は、長い間忘れられ、歴史に埋もれた存在だった。明治42年、吉田東伍によって世阿弥の伝書が発見、ここにはじめて『風姿花伝』『花鏡』が世に姿を現す。この時同時に見つかったのが、謡曲集『金島書(金島集)』。佐渡での感慨を綴ったこの書によって、はじめて世阿弥が佐渡に流されていたことが明らかになったのだった。

No.106 小説家 藤沢周 言葉ならざる花を言葉で描く

佐渡の正法寺に古くから伝わっていた「雨乞いの面(神事面びしみ)」がある。鎌倉後期の作であると推定されるこの面は能面完成以前の表現方法があることから、流された世阿弥が持ち込んだものと考えられている。藤沢さんはこの面をろうそく能の折に見た折、やはり不思議な「声」を聞いたという。我々も撮影させていただいたその面は、不思議な迫力に満ちていた。『金島書』を丹念に読み込むことは勿論、「声」を聞くかのごとき鋭敏な感受力で、藤沢さんは晩年の世阿弥の心境を見事に描き出した。

No.106 小説家 藤沢周 言葉ならざる花を言葉で描く

藤沢さんは数年来、観世流シテ方梅若紀彰さんを師匠に能の稽古を続けている。実践を通して自らの身体で得た感覚が、小説に結実した。番組では下掛宝生流ワキ方の安田登さんと対談もしていただいた。安田さんは、この小説が能と同じような構造、機能を持っていると語る。小説の一節を朗読する安田さんの「声」。藤沢さんに稽古をつける梅若紀彰さんの「声」。身体に響くその声は格別で、近くでありながら、同時に遠い世界からの声のようにも感じられた。遠近を超え、現世と幽界の「あわい」に響く声のなかに、観客は「花」を見る。世阿弥が能の中で咲かせた「花」。それを言葉を通じて表そうとしたこの小説にも、読む者の心を明るく照らす「花」が咲いている。

No.106 小説家 藤沢周 言葉ならざる花を言葉で描く
text 羽根井信英(ディレクター)
藤沢周

藤沢周 (小説家)
1959年新潟県生まれ。1984年法政大学文学部を卒業し、書評紙『図書新聞』編集者などを経て、1993年に『ゾーンを左に曲がれ』(『死亡遊戯』と改題)でデビュー。1998年『ブエノスアイレス午前零時』で第119 回芥川賞受賞。主書に『刺青』『陽炎の。』『幻夢』『心中抄』『焦痕』『第二列の男』ほか多数。鎌倉市在住。

PLANNER / SUPERVISOR
城戸朱理
CAMERA
佐藤洋祐
EED
池田聡
AUDIO MIXER
富永憲一
SOUND DESIGN
玉井実
IN COOPERATION WITH
能楽協会/日本芸術文化振興会/横浜能楽堂/佐渡観光交流機構/佐渡汽船株式会社/奥津健太郎
PRODUCER
寺島高幸/平田潤子/設楽実
DIRECTOR
羽根井信英

EDGE 1 #36 / 2022.01.29

2022.12.11(日) 11:30-12:00 放送 (BS日テレ)