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俳人

生駒大祐

No.105 俳句。生駒大祐の世界

Ikoma Daisuke

2021.09.18(土) 08:00- 放送
(スカパー! Ch.529)

聳えたつ木の姿から、《ひぐまの子梢を愛す愛しあふ》という一句が生まれたわけではない。器に転がりこむ鈴の音から、《六月に生まれて鈴をよく拾ふ》という一句が作られたわけではない。むしろ、言葉のほうが、画面に映しだされる景色のうえに、新しい認知を作りだしていく。句を作るのに「風景などを見る必要はない」。生駒大祐の句の源泉は、新旧の句集や歌集、誰かが書いた言葉そのもののうちにある。

No.105 俳句。生駒大祐の世界

《里芋が滅法好きで手を叩く》。一句は、作者個人の嗜好を記すためではなく、「滅法」という語を活かすために、とりまく言葉を「最適化」していく試みから生じたものだ。俳句は言葉だから、言葉があれば生まれる。「俳人」を名乗ることへの違和感。「〈人〉って言葉つかないほうが、より自然かなって思ってる」。だから、プロフィールには「俳句。」とだけ書く。余計なものを排して、思考は切り詰められていく。「面白い俳句を、打率高く、作るためにはどうしたらいいか」——極限まで削ぎ落された思考のもとに、追い求められているのはその答えだ。

No.105 俳句。生駒大祐の世界

しかし、映像はそのことを伝えるだけでは充足しない。「読み方、意味とかの把握の仕方が、時代とか、ひとによって大きくぶれる」ということは、彼自身も承知している。カメラは、そうしたすれちがいの現場を克明に記録していく。Zoomでの読書会における『土方鉄句集——よき日のために』に対する彼の評価の内実は、必ずしも参加者たちに共有されているようには見えないし、《汝二人西瓜の冷に眩む皿》という一句は、句会において、彼が書こうとした意味では読み手に届いていかない。逆説的に思われるかもしれないが、これらのすれちがいの場面を通じて、映像の彼とその俳句は、しだいに外へとひらかれていく。ドキュメンタリーとしての本作の見どころは、なにより、そうした機微を捉えたことにあるだろう。

No.105 俳句。生駒大祐の世界

だが、この一連の映像のなかで、彼のもっともやわらかな声と表情を引きだしてみせたのは、やはり高校時代からの一番の俳句仲間、藤田哲史だった。「あのときのわれわれに対して句を書いてるみたいなとこ、あるじゃない」。机に並んで語らう二人の姿に、彼らの原点を見る思いがする。

No.105 俳句。生駒大祐の世界
text 福田若之
生駒大祐

生駒大祐 (俳人)
1987年三重生まれ。「ねじまわし」同人。イベントユニット「真空社」社員。受賞に第3回攝津幸彦記念賞、第5回芝不器男俳句新人賞、第11回田中裕明賞(『水界園丁』にて)等。句集に『水界園丁』(港の人, 2019)。

PLANNER / SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATION
佐藤玲
CAMERA
草柳徹也/森威宏
AUDIO
野澤勝一/長谷川匡史
EED
池田聡
AUDIO MIXER
富永憲一
MUSIC
玉井実
PRODUCER
設楽 実/寺島髙幸/平田潤子
DIRECTOR
舞木宏美

EDGE 2 #38 / 2021.09.18

ベターライフチャンネル(スカパー! Ch.529)にて放送中
スカパー!オンデマンドでも視聴可能