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詩人

ゲイリー・スナイダー/
谷川俊太郎

太平洋をつなぐ詩の夕べ

Gary Snyder/
Shuntaro Tanikawa

本篇は、1955年以降のアメリカに登場したビート詩人であり、日本で10年以上も禅仏教の修行をした詩人として名高いゲーリー・スナイダー、そして同じころに日本詩壇へとすい星のごとく現れ、現在も旺盛な詩的活動を続けている谷川俊太郎のポエトリー・リーディングの記録である。スナイダー、谷川が各々の詩を読み、その日本語訳/英訳をふたりが読む、というぜいたくな構成だ。本篇は、「声の文化」である詩を日・英両方で楽しめ、さらに詩人本人から詩にまつわる話が聞ける。詩の「意味」はもちろん重要だが、まずは詩の音楽性を楽しみつつ、その意味にも想像力を開いていく、それが本篇の楽しみ方だろう。

太平洋をつなぐ詩の夕べ

全篇が見どころといって過言ではないが、本篇には「越境」というテーマが見え隠れする。詩人としての資質、出自、使用言語、スナイダーと谷川はことごとく違うが、そういった差異など越えて、お互いがリスペクトを払うふたりの姿。俳句からの影響をお互いがお互いの詩に認めている部分での、「俳句」と「世界文学としてのハイク」の差異。スナイダーのシエラネヴァダ山脈の家での生活は、21世紀と19世紀を組み合わせた(時間的に越境する)ライフスタイルであること。その生活の実践も仏教由来であり、「どう毎日を過ごすのか」という「知的な実践」にこそ仏教はある、というスナイダーの、日本とは異なる仏教観。「善/悪」という二元論的思考(善/悪を設定するから悪/善も生まれる)。こういった差異をどのように越境するのかは、本篇を観ていただきたい。
詩は予言的役割を果たすことが往々にしてあるが、最後にスナイダーが読む2篇は、新自由主義下で失われていく民主主義、そして「人災」と認定された福島第一原発の未曽有の災禍の予言となっている。太平洋のみでなく、上記の要素を越境するふたりの詩人たちの豊かな表情を、多角的なカメラワークで捉えた映像も楽しんでいただきたい。

太平洋をつなぐ詩の夕べ
(text 遠藤朋之)
ゲイリー・スナイダー/<br />谷川俊太郎

ゲイリー・スナイダー (詩人)
1930年アメリカ・カリフォルニア生まれ
1956に来日し、10年以上京都で臨済禅を学ぶ。59年に第1詩集『Riprap』を刊行。代表作『亀の島』(1974年刊行)はピューリッツァー賞を受賞。

ゲイリー・スナイダー/<br />谷川俊太郎

谷川俊太郎 (詩人)
1931年東京府生まれ
1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。 詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を手掛けてきた日本を代表する詩人。近年はアプリを利用するなど、 詩の可能性を広げる試みを行う。

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EDGE SP #12 / 2012.05.19

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