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詩人

及川俊哉

語りえぬ福島の声を届けるために
〜詩人・及川俊哉 現代祝詞を詠む〜

Toshiya Oikawa

2009年に上梓した第一詩集『ハワイアン弁財天』で脚光を浴び、同人誌「ウルトラ」二代目編集長として、新世代の詩を牽引していた詩人・及川俊哉。彼の生活と人生を一変させたのは、住み慣れた福島に甚大な被害をあたえた東日本大震災だった。

語りえぬ福島の声を届けるために 〜詩人・及川俊哉 現代祝詞を詠む〜

震災のあった2011年3月11日から、三年。及川俊哉は、これまでのポップで挑戦的な詩風をやめ、現代の詩の言葉と東北に代々伝わる祝詞を融合させた「現代祝詞」の執筆に専心していた。さらに、福島第一原発事故でゴーストタウン化した浪江町、被災地に赴いては、祝詞を読みあげる活動をしているという。詩人は東北各地の神社を訪い、神主と会っては、いまは忘却の彼方にしかない、古代東北の声をキーボードに天下降らせようとする。原発やセシウムさえも、現代の荒御魂として迎える、鎮魂の言葉で。
そして、国会議事堂のまえには、正装してたたずむ詩人の精悍な姿があった。古代蝦夷の神々、荒脛巾大御神の源流へと遡り、完成させた、新たな現代祝詞をたずさえて。

語りえぬ福島の声を届けるために 〜詩人・及川俊哉 現代祝詞を詠む〜
(text 石田瑞穂)
作品紹介

現代祝詞
古蝦夷神荒脛巾大神命に重ねて新たに機を開かれむことを請ひ願ふ詞 八十一

謹み敬って日高見国に神坐す荒脛巾大神命の大前に申して白さく、
そもそも汝大神は
古しへの祖神多邇知比古等が
忌庭に齋はり浄はり仕へまつれる
夜都賀波岐愛瀰詩の神なりと伝へ聞こゆ。
その上此の地は各族ありて、
八處の尾根、要害の石室に屯みき。
陸には深雪を蹴り翔りて許多く猪鹿を狩り、
海には軽舟を浮かべて終日魚を漁り、
春には雪割りて芽生ふ鉢華の若菜摘み、
秋には紅葉を踏み月を望みて鹽を運び、
いづつしきことなく穏しく安らけく歌ひ遊べり。

さりながら大倭の天皇は、
千五百の軍士力士を遣はし
吾が祖神をば群鳥の如くに追はしめき。
爾に大倭国は国の名を取りて日本国と號く。
大八島の蝦夷等は皆黙して止み、
汝大神は言向けられて身を隠したまひき。
しかあれども去る辛卯弥生十一日、
千歳毎の地震により大津波の来りて
山川悉に動み、国土皆震りき。
まろびたる塞石は防波堤を放ち、
陸には漁船を搤み批ぎて散かし
海には親と子と那勢命那邇妹命とを流し去る。
故、数多の青人草の泣きいさちること限りなし。
重ねて悪しきことには、
刺許母理て雷神を生める放射性物質の神等の
うつしき国中に満ち、
此れに因りて常夜往き、万の妖悉に発りき。
傷はえ民草の生へぬ地には飼はれし家裳能の
人を呼びて鳴きおらぶ声の響くなり。
此に汝大神の青人草等は患ひ哭き嘆き
黄泉の坂を塞りし石の開きたるがごとくに
心萎へたぎたぎしく得歩まじ。

汝大神に請ひ願はくは
うごなはれる大八島の青人草のため
千歳二千歳の眠りから作り活かさしめたまひて
古へのごとくに重ねて新たに機を開かれんことを。

吾等が汝大神を拝みて請ひ願うは
かしがましき世に重ねて諍ひの種を蒔かむとするにはあらじ
安く子産みの事を成すが如く
新しき時代の幕を開闢けむがために
吾等が魂を振り、霊の元に一つ火鑚りて燭したまへ。
霊は肚を養ひ、肚は心を養ふ
かく心養はば
交々絡みあふ難事を直に見定むべし。
かく見定めてば諸人に佳き閃き神閃きて、
四方遍く自ら照り明りくならむ。
かく宣らば汝大神は御心もあきらかに
神ながら聞し召せと称辞を竟へまつらくと申す。

2016年高円寺ドキュメンタリー映画祭にて上映
311ドキュメンタリーフィルム・アーカイブ登録作品
及川俊哉

及川俊哉 (詩人)
1975年岩手県生まれ
福島在住の国語科教師であり、詩の同人誌『ウルトラ』の2代目編集長。2009年、詩集 『ハワイアン弁財天』 を刊行。「水蛭子(ひるこ)の神に戦を防ぐ為に戻り出でますことを請ひ願う詞」にて第25回「詩と思想 新人賞」受賞。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
平田潤子
CAMERA
山崎裕
CA
水上慎也/松村敏行
AUDIO
黒木禎二/大場雅一
EDITOR
鈴尾啓太
EED
池田聡
AUDIO MIXER
富永憲一
AD
熊田草平
PRODUCER
平島進史/寺島髙幸
DIRECTOR
平田潤子

EDGE SP #15 / 2014.05.03

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