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詩人

カニエ・ナハ

詩人 カニエ・ナハ
未だ見ぬ詩の世界へ

Kanie Naha

底冷えする冬の京都。雪が舞う、氷点下の鴨川べりで、濡れそぼちながら、支流の水を汲んでは、本流に流している詩人がいる。
そこには、言葉は介在していない。
詩よりも詩的なものを求めて、パフォーマンスを繰り広げるカニエ・ナハ。「自分が詩的な風景の一部になりたい」と語る詩人は、言葉による詩のみならず、同世代の詩人の詩集を自らデザインして手作りし、パフォーマンスにも打ち込む。そこには、全存在を賭けて、詩を生きようとする姿がある。

詩人 カニエ・ナハ 未だ見ぬ詩の世界へ

東京、深川の自宅には、画集から雑誌まで、さまざまなジャンルの資料が溢れ、ダイニングのスペースまで占領している。たとえば、猫。あるいは落語。まったく関係がないものが出会うとき、そこに新しい何かが立ち上がる。そこに詩があるのではないか。
自由詩には定型がない。しかし、書き続けるにつれて、自分なりの形が生まれ、定型化していってしまう。それを破壊しないかぎり、前には進めない。その意味では、カニエ・ナハとは、変化し続ける者に、与えられた名前なのかも知れない。

詩人 カニエ・ナハ 未だ見ぬ詩の世界へ

詩集『用意された食卓』で、2016年の中原中也賞を受賞し、今、もっとも注目を集める詩人は、「不安な時代に、今しか切れないシャッターを切りたかった」と語る。
さらには、「世界は悲惨になっていって滅びるんだっていう。そのうち詩を書くことさえ禁止されるかも知れないし。まだ書けるうちに書いておこう。そういうのがあるかも知れませんね」と。
詩を書き、詩を演じ、詩の風景の一部となり、詩の風景を作り出すことで、文明の衰弱に抗う詩人の姿が、ここにある。

詩人 カニエ・ナハ 未だ見ぬ詩の世界へ
(text 城戸朱理)
作品紹介

ミシカ

降りて院道を歩いているが、
兆候はついに一度も訪れない、

なぜ私が歩いていたのか聞いていない
先に進んで月の跡から

発掘されて自らの音像を描いて
白に達して山門

濡れ縁に座っているのを見る御嶽

庭に出て、間にとどまりうずくまるとき、
連れて出てくるまで待って、

石段の下に送った今日は
素敵な一日になるだろう

白い光が鋭い冬を和らげて
芭蕉を抜粋し

永遠に風を覚えていた
寂しさを生誕させ荒廃を復活させ

動脈も降雪も遠く離れて藁葺屋根
後ろの隙間が切り取られ

文に刻まれ
丘の後ろの私も死んだ

(お墓らは深雪を食べて生きている)

生から遠く離れている
自分らがさまよっている

物語の再び来る、
(楊梅楊梅陰と陽)

それは、それは、それは、それは、

カニエ・ナハ

カニエ・ナハ (詩人・ブックデザイナー)
1980年神奈川県生まれ
2015年、第4回エルスール財団新人賞受賞。2016年、『用意された食卓』で第21回中原中也賞受賞。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
中村優子
CAMERA
山崎裕/髙野大樹/ 井手口大騎ダグラス
AUDIO
池田 健/武井俊幸
EDITOR
山下徹
EED
池田聡
AUDIO MIXER
富永憲一
PRODOCER
寺島髙幸/平島進史/平田潤子
DIRECTOR
熊田草平

EDGE 1 #25 / 2017.03.11

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