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画家

山本賢弥

(無題)

Yoshimi Yamamoto
(無題)

美術家、山本賢弥(よしみ)。画家としてのひとり立ちを目指す、37歳の女性である。
彼女はほとんど独学で技術を学び、日本画の画材を使って制作をスタートする。「フワリ」や「ゆらゆら」と題されたその作品たちのモチーフは、哺乳瓶やおしゃぶりといった、おそらくはわたしたちの誰もが幼き日に親しんだものだ。一部から注目をされはじめてはいるものの、まだ世間に広く認められるという段階には至っていない。 収入を得るため、レストランやバーでのアルバイトを掛け持ちし、空いた時間に制作をおこなう。芸術のみで生計を立てることは難しく、不安定さはつねにつきまとう。しかし、「不安定」とはもともと、彼女にとっては卑近なものでもあった。

(無題)

家族とのつながりに恵まれていなかった山本。両親の離婚によって父とは幼い頃に別れ、母も専門学校の在学中に亡くなる。自分の支えになってくれた兄も、不慮の事故によって命を落とす。ひとりになったことについては、「失った」よりもむしろ、「残された」という喪失感が強かったという。死や生に対して屈折した興味を持つようにもなり、それは芸術のモチーフに強い影響を与えた。哺乳瓶とはあるいは、彼女が生の実感を得るための、補完剤のようなものであったのかもしれない。

(無題)

強い個人性をともなった山本の作品は、しばしば「客観性を欠いている」とも指摘される。大切な人を失ったこと――喪失感への執着がその源泉であることは、彼女もおぼろげに気づいてはいる。親代わりでもあった兄の死に対して、自分はどのように向きあうべきか。答えは作中では出ない。しかし、彼女は「描き続ける」ことを選ぶ。苦悩は必ずしも癒されないが、キャンバスに向かう彼女の顔は、不思議と光を得たように見える。

(無題)
(text 若林良)
山本賢弥

山本賢弥 (画家)
高校卒業後、画家を目指して制作を続け、30歳の時に日本画の画材を使って絵を描き始める。2003年に初の個展を開く。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
天光眞弓
CAMERA/演出
中村健
撮影協力
松永朋広
AUDIO
宮沢雅昭
EDITOR
小俣孝行
AUDIO MIXER
吉田一明
SOUND EFFECTS
玉井実
AD
松浦桃子
PRODUCER
寺島髙幸/清田素嗣・設楽実
DIRECTOR
中村健

EDGE 1 #16 / 2004.07.24

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