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画家

林哲夫

歸らざりし風景を索めて
~画家・林哲夫の古本小径~

Tetsuo Hayashi

一冊の本がある。タイトルは『古本屋を怒らせる方法』(白水社)。著者は、画家・林哲夫。かれの画集『LES IMAGES ET LES MOTS』(1992)には、ていねいに細部を描かれた静物が多く画面を占める。そこにはしばしば、本が置かれている。

歸らざりし風景を索めて ~画家・林哲夫の古本小径~

ざんばらの髪に無精髭をたくわえた画家は、雑然とした畳のアトリエでこう云う、「古いものがただ単に好きというかなあ、やっぱり時間が経って風化した肌合いとか、いいでしょう? いいんですよ」。かれの著書にはこうある、「蔵書の散逸は、新たな蒐集の血肉となり、骨となる。蔵書、死すべし。もし死なば、多くの果を結ぶべし」。かれは、たいそう奇特な古本蒐集家でもある。

歸らざりし風景を索めて ~画家・林哲夫の古本小径~

画家は静物を描きつづける。時間を経てある独自の重力をともなった物たち。古本もまた、多くの人の手にわたるなかで、背は綻び頁は退色し、独特の味わいを帯びてゆく。かれは、画に描くために古本をもとめることがあるという。画家の視線は、知の蓄積とは異なる「物」としての本が引き受ける時間に、向けられている。
林は、先の著作でこう書いている、「百円のプルーストとの出会いが人との出会いを生み、人との出会いがさらに本を呼び寄せる。それはまた、書物の中に生きる人々との遭遇にも通じるのだ」。画家はアトリエで、きょうも静物を描いている。

歸らざりし風景を索めて ~画家・林哲夫の古本小径~
(text 萩野亮)
林哲夫

林哲夫 (画家・著述家・装幀家)
1955年香川県生まれ
2002年、『喫茶店の時代』で第15回尾崎秀樹記念大衆文学研究賞受賞。自身が装丁を行った著書『書影でたどる関西の出版100』は第9回竹尾賞デザイン書籍優秀賞。古本の蒐集家でもあり、著書に『古本屋を怒らせる方法』などがある。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
矢田耕司
CAMERA
宮内文雄
VIDEO ENGINEER
大場雅一
CA
堀越希美恵
EDITOR
西村康弘
AUDIO MIXIER
吉田一明
ASSISTANT DIRECTOR
松田知子
PRODOCER
寺島髙幸/清田素嗣・設楽実
DIRECTOR
狩野喜彦

EDGE 2 #30 / 2008.12.27

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