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詩人

守中高明

声たち、ざわめく灰の記憶
〜境界線の言葉〜

Takaaki Morinaka

都市の夜のかたわらに置かれたスクリーンに砂丘が映っている。彼方から鐘の音が聞こえる。
浄土宗専念寺。新宿区原町にあるこの寺でかれは生まれた。守中高明。僧侶であり、ヨーロッパ思想研究者であり、詩人であるかれは、複数の声をもっている。大学の研究室で、短くそろえられた髪にノーカラーのシャツに身を包んだかれは、慎重にことばをえらびながらこう言う、「この環境に生まれたことが、わるくはなかったなと思うのは、詩にかぎらず、ある種の作品を生み出すために必要なねじれといいますか、錯綜といいますか、それをあたえてくれたという気はしているんです」。

声たち、ざわめく灰の記憶 〜境界線の言葉〜

ねじれ、または錯綜。詩人は生まれながらにそれを引き受け、境界上にみずからの声を律してゆく。かれがプラトンを引きながら、共同体の批判者としての詩人の使命を語るとき、そのあやうく際どい立ち位置はいっそう鮮明なものとなる。
「詩を書くことによってしか支えられない何かがわたしのなかにあって、それに衝き動かされてわたしは詩を書き始めましたし、いまでも詩を書きつづけているわけです。ところがこの詩作というのはじつに奇妙な経験で、逆に書けば書くほど、よりあらたな解決しがたい何かが自分のなかに生まれてくる。ですからわたしにとって詩作というのは、そのような解消しがたいパラドックスの経験そのものだというふうに感じています」。

声たち、ざわめく灰の記憶 〜境界線の言葉〜

女優・蜷川有紀との朗読に、港大尋のピアノの旋律がかさなる。コラボレーション『シスター・アンティゴネーの暦のない墓』の上演。共同体がつくりあげる「歴史=物語」からさらさらとこぼれ落ちる、砂のような、灰のような記憶が、ひとつひとつの発語とともにざわめき始める。

声たち、ざわめく灰の記憶 〜境界線の言葉〜
(text 萩野亮)
守中高明

守中高明 (詩人)
1960年東京都生まれ
浄土宗の僧侶でありフランス現代思想の研究者でもある。1992年、『未生譚』で第3回歴程新鋭賞。2001年『シスター・アンティゴネーの暦のない墓』では山本健吉文学賞詩部門を受賞。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
語り
天光眞弓
CAMERA
中村健
CA
堀金伸一郎
EDITOR
池田聡
AUDIO MIXER
吉田一明
SOUND EFFECTS
玉井実
WARDROBE PROVIDED BY
VALENTINO
AD
松尾美亜
PRODUCER
寺島髙幸/大伴直子・設楽実
PRODUCTION MANAGER
清田素嗣
DIRECTOR
狩野喜彦

EDGE 1 #4 / 2001.10.13

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