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ライター

岡崎武志

古本で、ひとは作られる

Takeshi Okazaki

東京、西荻窪。かつてより作家や詩人が多く棲み、古本文化をいまに伝えるこの町を、かれはよくたずねる。
文筆家、岡崎武志。かれはたいそう奇特な古本蒐集家でもある。「よく聞かれるんですよ、買った本をぜんぶ読むんですか、って。読むわけないんですよ」。朱色の眼鏡に口髭をたくわえた蒐集家は、はんなりとした大阪方言であっけらかんと話す。

ひとは、古本で作られる

古本屋でかれが目を留めるのはじつに珍本ばかりである。たとえば昭和初期に刊行された『シェパードの飼い方』。犬も飼っていないしシェパードにも興味がない、だけどこの本をかれは買う。昭和初期にシェパードを買うことができたのは上流階級だけで、この本は、思いがけず当時のある階級の暮らしをおしえてくれる、のだという。蒐集家の書棚には、この本にかぎらず昭和初期のものが多くならぶ。それは、昭和初年に生まれ、若くして亡くなった父が生きた時代に思いをいたらせるためのものだったのかもしれない、とかれはあとから気づかされる。
人は本を作り、本は人を作る。そしてまた人は本を作る。古本とは時代の証言であり、古本屋とは記憶の場所である。その日、かれがたずねた西荻窪の古書店は、いまは音羽館をのぞいてほとんどが閉店している。

ひとは、古本で作られる
(text 萩野亮)
岡崎武志

岡崎武志 (書評家・古本ライター)
1957年大阪府生まれ
大学卒業後、高校の国語講師になるが退職し、上京。雑誌編集者を経てフリーライターへ。1997年『ニッポン文庫大全』の編集執筆を契機に、文庫、古本について書くようになる。雑誌「SUMUS」同人。近著に『気まぐれ古本さんぽ』『ここが私の東京』『読書で見つけた こころに効く「名言・名セリフ」』『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』など。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
はな
CAMERA
木村重明
CA
豊森雅彦
AUDIO
桑原伸行
SOUND EFFECTS
玉井実
EDITOR
池田聡
AUDIO MIXIER
吉田一明
ASSISTANT DIRECTOR
松本佳菜子/外山竜大
PRODUCTION MANAGER
清田素嗣
PRODOCER
寺島髙幸/大伴直子・設楽実
DIRECTOR
井上春生

EDGE 2 #2 / 2002.02.23

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