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歌人

東直子

せつない、いとおしい、喪失感ノモノガタリ

Naoko Higashi

その歌人の歌には、しばしば不思議な空白が投げこまれる。「廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て」――彼女の代表歌の「来て」の前に潜む、俳句の切れとも異なる空白は、何を意味しているのか。ウサギやウマに扮した人物が登場し、まるで絵本をめくるように展開する懐かしく切ない映像の中に立つ東直子が、その「空白」について語り始める。

せつない、いとおしい、喪失感ノモノガタリ

片腕の魔物が登場する安房直子の童話『北風のわすれたハンカチ』をバラバラになるまで読んだ内気な少女は、大人になって歌人になり、若者の圧倒的な支持を得て、いまや現代短歌の最前線に立っている。家族、仲間に囲まれながらも、東が書くのは、独白の歌だと言う。

せつない、いとおしい、喪失感ノモノガタリ

自宅のベランダから望む遠くのマンション群がロボットの家族に見えると言う歌人の心には、あどけない少女が住んでいるのだ。一拍置いたあとの短い「来て」は、舌足らずな少女の言葉。誰にも向けられていない呟きだからこそ、読者はそれが自分自身に向けられていると錯覚する。思わず孤独な少女の手を握ろうとしてしまう。誰もが持っている寂しさの器として、東の短歌は今日も現代を生きる人々の口に優しく宿る。

せつない、いとおしい、喪失感ノモノガタリ
(text 高柳克弘)
東直子

東直子 (歌人・作家)
1963年広島県生まれ
1996年、「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞を受賞。同年、『春原さんのリコーダー』を刊行。2006年、『長崎くんの指』で小説デビューする。著書に歌集『青卵』『東直子集』『十階』や、『とりつくしま』『薬屋のタバサ』『トマト・ケチャップ・ス』等の小説・エッセイがある。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
中尾良平
CAMERA
成田伸二/新垣直哉/平林聡一郎
VIDEO ENGINEER
土屋吉正/岸直隆/井之上大輔
CA
築田智哉/門脇妙子
SOUND EFFECT
玉井実
EDITOR
西村康弘
AUDIO MIXIER
吉田一明
ASSISTANT DIRECTOR
松田知子/赤池佑介
PRODOCER
寺島髙幸/清田素嗣・設楽実
DIRECTOR
田島櫻子

EDGE 2 #32 / 2010.04.10

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