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作家

藤沢周

「海」がただ「海」であること。
小説家 藤沢周の原風景

Shu Fujisawa

俺は振り返る 星球のついた警棒が 俺の右耳脇にヒットする
風、 乾いたビル風。 俺は女の小便の上に顔をつっぷす。
まだ温かい女の小便。 一瞬、ステゴザウルスのヌイグルミが視野をよぎる。
女の笑い声がする。
『サトーリ』より

1993年に『死亡遊戯』でデビューし、1998年には『ブエノスアイレス 午前零時』で第119回芥川賞を受賞した作家、藤沢周。小説とも詩とも限定できない断片的な言葉を読者に投げつけ、乾いた文体で多くのファンを魅了している。状況を無視し、緻密なディティールを畳み掛けるそれらの言葉は、一体どのように手に入れるのだろうか?

「海」がただ「海」であること。小説家 藤沢周の原風景

藤沢を乗せた新幹線が故郷・新潟へと向かう。漁師町で育った藤沢の目の前には、常に海があった。遊ぶときも、ケンカのときも、風邪を引いたときも…それは、デビューして程ない頃、作家としての評価に戸惑い、言葉を失いかけたときも同じだった。自分の言葉と現実が乖離し、どこまでも内省の世界に落ち、孤絶する。雪景色の中、狂いそうになって海にゆくと、考えていたことが全て逆になる。自我は抜け落ち、生も死もない状態から、やがて言葉が息を吹き返す。ああ海って、海なんだ、と。

「海」がただ「海」であること。小説家 藤沢周の原風景

人は言葉によって自己を獲得し、世界を表象しようとするが、表象しようとする対象物は、おそらく言葉以前にあるのではないか。こう確信する藤沢は、今日も自己と世界のあいだに「/」(スラッシュ)を引き、その裂け目からみえてくる、言葉の息のかからない、むき出しの存在を求め続けている。ふるさと内野の海で見た、問いでもなく、答えでもない、ただ世界の豊穣さを示してくれるものを言い表わすために。

「海」がただ「海」であること。小説家 藤沢周の原風景
(text 佐藤寛朗)
藤沢周

藤沢周 (小説家)
1959年新潟県生まれ
書評紙「図書新聞」の編集者をつとめるかたわら執筆し、1993年「ゾーンを左に曲がれ」でデビュー。現代の暴力をかいた作品で注目される。1998年「ブエノスアイレス午前零時」で芥川賞を受賞。著作はほかに「紫の領分」「箱崎ジャンクション」など。

PLANNER/SUPERVISOR
城戸朱理
NARRATOR
中村健
朗読
伊沢磨紀
CAMERA
石川善彦
AUDIO
戸田裕士
SOUND EFFCTS
玉井実
EDITOR
池田聡
AUDIO MIXIER
三浦さおり
ASSISTANT DIRECTOR
竹下美紀
PRODUCTION MANAGER
清田素嗣
PORTRAILT PHOTOGRAHED BYR
清田素嗣
PRODOCER
寺島髙幸/大伴直子・設楽実
DIRECTOR
中村健

EDGE 2 #4 / 2002.04.27

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